ひとり会社ならどっち?「株式会社」vs「合同会社」徹底比較シミュレーション
ひとり会社を設立する際、誰もが直面するのが**「株式会社(KK)」と「合同会社(LLC)」のどちらにするか**という選択です。現在、AmazonやGoogle、Appleなどの日本法人も採用している「合同会社」ですが、知名度や実利の面でまだ株式会社との違いがあります。
結論から言えば、「見栄えと信用」を取るなら株式会社、「コストと自由度」を取るなら合同会社です。判断基準を4つの切り口で整理しました。
1. 設立コストと維持費の比較
初期費用を抑えたい場合、合同会社が圧倒的に有利です。
| 項目 | 株式会社 | 合同会社 | 備考 |
| 登録免許税 | 最低15万円 | 最低6万円 | 資本金の0.7%(左記に満たない場合) |
| 定款の認証手数料 | 約3〜5万円 | 0円 | 合同会社は公証役場での認証不要 |
| 官報掲載費 | 年間約6万円〜 | 0円 | 合同会社は決算公告の義務なし |
| 役員の任期 | 最長10年(更新が必要) | 無期限 | 合同会社は更新手続き・費用が不要 |
合計の差額: 設立時だけで約15〜20万円ほど合同会社の方が安く済みます。
2. 「社会的信用」と「取引先」への影響
ビジネスの相手が誰かによって、有利・不利が変わります。
株式会社が有利なケース
BtoB(対企業)ビジネス: 大手企業や役所との取引がある場合、株式会社の方が「しっかりした会社」という印象を与えやすく、口座開設や契約がスムーズに進む傾向があります。
採用を予定している: 将来的に従業員を雇う場合、求職者は「株式会社」の方が安心感を持つことが多いです。
合同会社でも問題ないケース
BtoC(対個人)ビジネス: 飲食店、美容室、ネットショップなど、看板名やサービス名が表に出る場合、法人形態を気にする客はほとんどいません。
IT・コンサル・フリーランス: スキルそのものが商品となる業種では、合同会社でも取引に支障が出ることは少なくなっています。
3. 運営の「自由度」と「税制」
ひとり会社において、税制上の優遇措置(節税メリット)はどちらを選んでも全く同じです。しかし、内部のルール作りには差があります。
合同会社は自由: 利益の配分を「出資比率」に関係なく自由に決められます(ひとり会社の場合はあまり関係ありませんが、将来の拡張時に便利です)。
株式会社は厳格: 会社法の規定が多く、株主総会や取締役会の開催など、事務的な手続きがより厳格に求められます。
4. どっちを選ぶべき?フローチャート診断
自分の状況に当てはめてみてください。
「株式会社」を選ぶべき人
将来、外部から投資を受けたい、または上場を目指したい。
取引先が大手企業や行政機関が中心である。
「代表取締役」という肩書きが欲しい(合同会社は「代表社員」)。
「合同会社」を選ぶべき人
設立費用やランニングコストを1円でも安く抑えたい。
自分一人で完結する仕事(フリーランス・コンサル)である。
形式よりも実利(節税)が目的である。
5. まとめ:ひとり会社なら「合同会社」からスタートもあり
まずは合同会社で設立し、事業が大きくなって信用が必要になった段階で株式会社へ「組織変更」するというルートも可能です(手数料は約10万円〜)。「まずは箱(法人)を作って節税を開始したい」というひとり社長には、合同会社が最も合理的といえます。