彼女の安眠を守る!耳鼻咽喉科でできる「いびき対策」の全貌と診療の流れ
パートナーのいびきに悩まされていませんか?「疲れているだけ」「男性のいびきは仕方ない」と放置されがちですが、特に女性のいびきは**睡眠時無呼吸症候群(SAS)**など、見逃せない体のサインかもしれません。
いびきの原因は、空気の通り道である気道(上気道)が狭くなることです。この狭窄の原因の多くは、鼻や喉の構造的な問題にあります。だからこそ、耳鼻咽喉科は、いびきやいびきによる無呼吸の診断・治療において、非常に重要な役割を担っているのです。
今回は、耳鼻咽喉科で受けられる検査の流れから、根本的な解決を目指すための具体的な治療法、そして気になる費用目安までを詳しく解説します。
なぜ耳鼻咽喉科なのか?いびき診療の強み
いびきや睡眠時無呼吸症候群の専門的な診療は、耳鼻咽喉科、睡眠外来(呼吸器内科)、歯科などで連携して行われます。その中でも、耳鼻咽喉科は特に構造的な問題の特定と治療に特化しています。
1. 鼻と喉の構造を直接診断
耳鼻咽喉科の医師は、**内視鏡(ファイバースコープ)**などの専門器具を使って、鼻の奥から喉の奥、**軟口蓋(なんこうがい)や口蓋垂(こうがいすい/のどちんこ)**といった、いびきの発生源を直接観察できます。これにより、物理的な狭窄部位や、鼻づまりなどの原因を正確に突き止められるのが最大の強みです。
2. 「かくれ鼻づまり」への対応
いびきや無呼吸のある人の約75%に鼻づまりがあると言われています。特に寝ているときに症状が悪化する**「かくれ鼻づまり」は、口呼吸を促し、舌が喉の奥に落ち込みやすくなるため、いびきや無呼吸の直接的な原因になります。耳鼻科では、鼻中隔湾曲症やアレルギー性鼻炎**、肥厚性鼻炎といった鼻の問題に対する治療も並行して行えます。
耳鼻咽喉科での「いびき・SAS」診療の流れ
耳鼻咽喉科を受診した場合、治療に至るまでの一般的な流れは以下の通りです。
STEP 1:問診と診察・視診
まずは、いびきの状態、日中の眠気、既往歴などを医師が詳しく確認します。
問診: いびきの大きさや頻度、睡眠時無呼吸の有無(ご家族やパートナーの証言が重要)、日中の眠気の程度を詳しく聞かれます。
視診・内視鏡検査: 鼻や喉、扁桃腺の状態をファイバースコープなどで直接観察し、いびきの原因となる物理的な構造上の問題がないかをチェックします。
STEP 2:簡易睡眠検査(SASのスクリーニング)
睡眠時無呼吸症候群(SAS)の疑いがある場合、自宅で手軽にできる簡易検査を行います。
検査内容: 検査機器を自宅に持ち帰り、指や鼻にセンサーを装着して一晩就寝します。
測定項目: 睡眠中の呼吸の乱れ、**血液中の酸素飽和度(SpO2)**の低下、脈拍数などを測定し、**無呼吸・低呼吸の回数(AHI)**を算出します。
診断: このAHIの数値によって、睡眠時無呼吸症候群の重症度を判定します。
STEP 3:精密検査(必要な場合)
簡易検査の結果、さらに詳細なデータが必要と判断された場合、**精密検査(終夜睡眠ポリソムノグラフィー:PSG)**を行います。
検査内容: 専門の医療機関に一泊入院(あるいは在宅でより詳細な機器を装着)し、脳波、心電図、睡眠の深さなど、より多くの項目を測定して確定診断を行います。
STEP 4:治療方針の決定
検査結果に基づき、重症度といびきの原因に合わせて最適な治療法が選択されます。
耳鼻咽喉科で選択できる具体的な治療法
耳鼻咽喉科では、薬やCPAP治療の導入に加え、特に外科的な治療を強みとしています。
1. CPAP(シーパップ)療法(中等症〜重症の標準治療)
概要: 鼻に装着したマスクから空気を送り込み、気道を広げて無呼吸を防ぐ治療法です。
耳鼻科の役割: 鼻づまりが強いとCPAPの空気が漏れたり、不快感で治療継続が難しくなったりします。耳鼻科では、CPAP治療の効果を最大限に高めるために、鼻炎の治療や鼻の手術を並行して行うことがあります。
費用目安: 保険適用で、機器のレンタル代と診察料を含め月額約5,000円程度(別途診察料)。
2. 外科手術:根本的な構造改善(保険適用あり)
いびきや無呼吸の原因が鼻や喉の構造にある場合、手術が根本治療の選択肢となります。
手術の種類 | 目的と概要 | 費用目安(3割負担) |
鼻中隔矯正術 | 鼻の真ん中の骨(鼻中隔)の曲がりを直し、鼻の通りを良くする手術。いびきの軽減に直結します。 | 8万〜12万円程度(入院費別) |
粘膜下下鼻甲介骨切除術 | 鼻の粘膜(下鼻甲介)の腫れを取り除き、鼻づまりを解消する手術。 | 4万〜6万円程度(入院費別) |
UPPP(口蓋垂軟口蓋咽頭形成術) | **喉の奥のたるんだ粘膜や口蓋垂(のどちんこ)**を切除・縫縮し、気道を広げる手術。 | 10万〜20万円程度(入院費・高額療養費制度適用可) |
3. レーザー治療(切らない治療)
概要: レーザーを軟口蓋などに照射し、組織を引き締めて気道を広げる治療法です。
種類と費用:
LAUP(口蓋垂軟口蓋形成術): レーザーで切除・形成を行う。保険適用で約3万円程度(3割負担)。
ナイトレーズ/パルスサーミアなど: 切らずに粘膜を引き締める。自由診療で1回数万〜10万円程度。複数回の施術が必要です。
特徴: 比較的軽度のいびきに有効で、日帰りでの施術が可能です。
4. マウスピース(口腔内装置)療法
概要: 歯科と連携して作成する専用マウスピースで、下あごを前に出し、舌が落ち込むのを防ぎます。
適応: 軽度から中等度の睡眠時無呼吸症候群。
費用目安: 医師の診断があれば保険適用で、製作費は1万5千円〜2万円程度(3割負担)。
いびきは、二人の睡眠を妨げるだけでなく、パートナーの健康を蝕む危険性を秘めています。耳鼻咽喉科で原因を突き止め、最適な治療を選ぶことが、安眠と健康を取り戻すための確実な一歩となるでしょう。